農業生産の規模拡大に必要な要件とは
- 税の西田

- 9月4日
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Q 質問
3月に会社を定年退職すると、父の相続で農業を承継しました。5haの自作地は全て稲作とし田植えを終えました。近所の農家から耕作の依頼を受けていますが、会社へ勤めている長男の就農が見込めないので回答を留保しています。農業生産への期待が高まっている今日、農業経営はどうあるべきでしょうか。また、家業として承継した農業を次の世代が引き受けてくれる環境づくりとは何ですか。
A 回答
農業は自然が相手
種の保存を本能とする作物は自然と共生しています。雑草や病害虫を駆除すると、きれいな水と養分を得て自ら生長しやがて結実します。作物と会話しながら手を添えてあげると確かな答えが返ってくるといわれる証左です。
家業としての農業
米の生産を生業とする家業は家族の生活設計を支えるものとして、日々生成発展するものです。生計を支えるためには一定の利益があること、収入が安定していることが要件です。農業は自然の影響を受けやすく年々の所得は変化しやすいものです。純損失の繰越控除(3年間)や作付け計画によって所得の平準化を図ります。
採算を取る
事業は利益を上げなければ小さくなり、やがて消滅してしまうかもしれない。生産原価や販売費用を差し引いた販売利益で人件費や施設費用、管理諸費用を賄えれば採算が取れたということになります。さらに、農業機械などへの投資額は耐用年数の7年間で回収することになります。その減価償却費を計上してもなお利益があれば元手を回収し採算が取れたということです。償却後の損失は何年かけても利益を上げて回収しなければ次の投資に支障をきたします。
経営戦略をめぐらす
利益を上げるには販売高を確保することです。販売高は単価×数量です。単価が上がらなければ数量を増やし、数量が上がらなければ単価を上げることです。販売単価を上げるには品質を高めて出荷時期を変える。数量を上げるには作付けを増やし販売量を確保するなど質と量を満たす戦略が必要です。「入りを図って出を制す」式の経営姿勢が求められるところです。
確かな経営情報を得る
生産物を有利に販売して安定した経営を続けるには、あふれる経営情報を取捨選択して販売計画とこれに伴う生産計画を立てることです。生活情報も身近にあります。道の駅、直売所、スーパー、コンビニ、飲食店、我が家の台所など人の動きや物の流れ、消費動向が一目瞭然です。生産と販売の成果をことごとく数字で記録しておくと、正しい経営情報が瞬時にして分かります。直売所へ値札をつけて出荷するように生産原価はもとより、売値を自ら計算する周到さが求められます。
長男が就農する環境
長男が会社を辞めて就農するためには、給与を払える経営体であること。子どもの成長に合わせた増収のしくみがあること。社会保険の適用事業者であること。就業規則が備え付けられていること。採算の取れる経営体であること。伝承すべき栽培技術の秘伝があること。省力や効率を追求した施設が用意されていること。取引先仕入先と円満な取引関係が維持されていること。実績が累計していく会計のしくみがあること。等々、人が集まる必然性づくりです。
個人経営の限界
個人経営では青色申告を選択して専従者給与を支給し、経理に慣れたら複式簿記によって貸借対照表を作成する。認定農業者になって規模拡大に挑戦すると、家族労働から雇用労働への転換が進まないことがわかる。仕事と台所がいっしょで、どんぶり勘定に陥りやすい。減価償却が進んでも次の投資資金は他に流用されてしまう。毎年の成果は事業主貸、事業主借勘定、元入金勘定で相殺され翌年へ累積しない。個人経営では規模拡大に限界がありそうです。
家業の法人成り
法人組織は経営資源としての人・物・金を集約しやすく、法人成りすると人が集まり取引相手も寄ってくるものです。何より、毎年の損益は累積し減価償却による資金は預貯金などへ蓄積される。欠損金が発生しても10年間の繰越控除が認められていること。個人所得に対する実効税率は56%であるのに対して、法人税等の実効税率は30%であること。など後継者の受け皿として法人成りは恰好の手段といえます。
(『広報ほくさい』・『JA埼玉みずほ』2025年8月号掲載)



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