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  • 執筆者の写真税の西田

家事消費としての農業の損失は損益通算しない

Q 質問

私は会社勤務のかたわら家事消費のために野菜を作っています。農機具を整備し田畑はいつでも作付けできる状態に管理しています。販売していないので農業所得は毎年赤字です。幸いに給与所得があるので所得税の還付を受けています。販売を伴わない農業の所得は雑所得になるとのことですが、農業所得の計算と申告はどうなりますか。

 

A 回答

働き方改革が進み、サラリーマンの副業を認める企業が増えてきました。給与以外の所得が事業所得か雑所得かによって税負担に大きな影響があります。これまで雑所得についての明確な所得区分が示されなかったことから、このほど通達を改正し雑所得に該当する所得を例示するとともに、事業所得の判定についても明らかにしています。


所得区分の判定

副業に伴うその業務が事業的規模であれば事業所得に、そうでない業務の場合は雑所得に区分されます。事業所得とするには帳簿書類を作成し保存していること、その年分の収入金額が300万円を超えること、その事業に営利性があり反復継続して営まれていること、事業と認められる明らかな事実があることが要件になります。


事業所得の計算

事業所得については反復継続して営むだけに、青色申告によって引当金や準備金、事業専従者給与、少額減価償却資産の特例などを受けることができます。事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は他の所得と損益通算し、引ききれない部分は3年間の繰越控除か前年分へ繰戻して還付を受けることができます。


雑所得の計算

雑所得は、利子、配当、不動産、事業、給与・退職、山林、譲渡及び一時の各所得のいずれにも該当しない所得で、公的年金や個人年金、副業的な所得が該当します。事業以外の業務と判定された雑所得の必要経費は、収入金額を限度とされていますから損失が発生することはありません。


損益通算のしくみ

所得税は個人の一暦年における所得を10種類(利子・配当・不動産・事業・給与・譲渡・一時・雑・山林・退職)に分け、その性質に応じた計算方法によって各種所得の金額を計算します。計算の結果、不動産所得、事業所得、譲渡所得、および山林所得の金額の計算上生じた損失の金額は、一定の順序で他の所得から控除して総所得金額を計算することになっています。


家事消費のための農業

販売を目的とせず、帳簿書類も無く、もっぱら家事消費のための農業は事業ではなく事業以外の業務としての雑所得に区分されます。確定申告において、雑所得の金額が20万円を超える場合は、給与所得と総合して申告納税する必要がありますから留意してください。


農業所得の損失は

農業所得は事業所得のひとつであり、農産物を生産して販売する事業から生ずる所得とされています。農産物の販売価格が低迷するなかで生産資材の高騰など構造的な赤字経営を強いられ、補助金や交付金等によっても農業所得の損失が想定されます。農業所得の損失は他の所得と損益通算することによって源泉徴収税額や予定納税額の還付を受けることができます。


農業投資の回収

申告書によると、農業機械を700万円で導入されていますから毎年100万円の減価償却によって元手を回収することになります。市街化区域内の農業用地の固定資産税は3分の1課税としても30aで68万円、合わせて168万円の固定費になります。生産原価率は50%ですから336万円の販売高を確保する必要があります。副業ですとこの回収計算は成り立たず、正業なら節税と元手の回収が可能です。


これからどうする

農業機械が揃い田畑は耕せる状態とのこと、収支を伴えば農業経営そのものです。農業所得に関する帳簿書類を備え付けて農地や施設の管理、機械等の効率運転、農作業や販売高を記録できれば事業的規模を判定するまでもありません。家事消費のためだけの生産は帳簿書類を作成したとしても雑所得であり、所得税の還付はありません。直売所を活用するなど販売を伴った家業としての農業を目指してください。


(『広報ほくさい』・『JA埼玉みずほ』2023年10月号掲載)

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