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  • 執筆者の写真税の西田

相続登記は権利なの?義務なの?税負担は?


Q 質問

 父の相続のことで家族の話し合いが続いています。長女は他家に嫁ぎ長男の私は会社の近くに家を購入して親子で暮らしています。二男も同様です。父母が耕してきた田畑(2ヘクタール)は休耕にしました。とりあえず、父の遺産は全て高齢の母が相続することになりました。母の相続においても家に戻る者は無く、土地や建物の取得を希望する子はいません。そこで、不動産は父の名義のまま相続登記はしないつもりです。居宅は空き家になりますが、農地は法人に貸すか誰かに贈与するつもりです。将来は譲渡するか市へ寄付しようと考えています。何か問題になることはありますか。ほかに良い解決策はありますか。

 

A 回答

相続と遺産分割のしくみ

 相続は被相続人の死亡によって開始し、「被相続人に属した一切の権利義務は相続人がこれを承継する」とされていますが、これを放棄することができます。相続人が複数の場合は各相続人が財産債務を法定相続分で共有することになります。遺産分割はこの共有物を分割することです。


遺産分割の考え方

 共有になった相続財産は「物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢・職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれを決める」としているように、どのように分けるかは相続人に委ねられていますから相続人による慎重な話し合いを重ねる必要があります。さらに、農地は農地として宅地は宅地として相続人の仕事や生活のために活用しなければなりません。


配偶者が全てを承継すると

 配偶者が全ての財産を相続すると、父の相続では相続税が軽減されますが、母の相続で税負担が増えることになります。父母の相続での最適割合を試算して子ども達の取得財産を決めることにします。ご高齢だけに受け継いだ財産を適正に管理(貸借・売買・贈与など)することは難しく、後見人が必要になるかもしれません。近い将来に処分を予定する財産は子どもが承継するようにします。


土地を贈与するには

 農業の後継者が無く、農地や居宅の敷地の引き取り手が無いから高齢の配偶者がこれを相続するとしたのは、問題の先送りに過ぎず解決策にはなりません。農地を農業者以外の人に贈与することはできず、市に寄付採納を願い出ても、市が必要としない土地は寄付を受けてはくれないでしょう。


家と祭祀を守るために

 母の相続において子が事業や財産を引き継がないのであれば、相続人全員が相続を放棄するのも一法です。子が相続を放棄すると相続順位は被相続人の親(祖父母)、親がいなければ被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。実家に寄せる思いがある人が後継者になってくれるかもしれません。


被相続人の登記名義では

 財産取得者がいないことを理由に相続登記をしないとしていますが、被相続人の名義のまま贈与したり賃貸や譲渡をしたりすることはできないので、いったんは相続人の名義に変えなければなりません。


相続未登記を重ねると

 相続登記をするかしないかは任意ですから、登記を先送りすることも自由です。しかし、登記をしないでおくと相続人の数が増え権利義務が複雑になり、不動産をまともに管理運用することが難しくなります。事業者が公共のための土地利用を計画しても、登記未了地の所有者を探すことに多くの時間と費用がかかり、所有者を特定できても共有者の同意を得にくいのが現実。所有者を特定できないと周囲の治安・衛生・景観ひいては周辺地価の下落を引き起こすおそれがあります。


所有者不明土地が発生する

 農地を守ってきた家制度が廃止されて76年、土地神話が崩れて30年になります。少子高齢社会の真っ只中にある農家で相続が始まると、農地と農業の承継問題で苦労しています。土地は財産でなくなったこと、農業は家業から企業へと経営環境が一変したこと、均分相続が定着したことと相まって、相続の現場では未分割、共有、未登記、放置、空き家が増えているのです。



相続登記申請の義務化

 国は空き家問題とともに未登記や所有者不明になった土地を解消すべく、さまざまな対策を講じたのです。未登記不動産を相続した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が義務化され、正当な理由が無く申請を怠ったときは10万円以下の科料に処せられることになりました。遺産分割協議が成立した場合は、その内容に応じた登記申請が義務付けられました。これに伴い相続による所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置が講じられました。



(『広報ほくさい』・『JA埼玉みずほ』2023年3月号掲載)


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