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  • 執筆者の写真税の西田

相続法の改正で相続対策はどう変わりますか

更新日:2020年10月21日

Q 質問

 ともに80歳代になった父母は心身ともに健康な毎日を過ごしています。昨年から今年にかけて相続の法律が変わったそうですが、どんな改正ですか。我が家も相続対策を始めたいと考えています。どんな対策が有効ですか。



A 回答

・先送りしがちな相続対策

 大切な人との養子縁組、必要な遺言書の作成、移譲しておくべき財産、解決しておきたい問題はすべて相続前が期限です。実行する時期によっては無効になり、計画性がないと無駄になることがあります。被相続人は将来のことを憂い何か不安を抱えながらも、「そのうち、そのうち」と先送りして相続を迎えてしまうのです。家族の将来を見極めるためにも、親子の生前協議から始めてみてはいかがでしょうか。争いの種が見つかるかもしれません。


・配偶者にやさしい相続法

 個人の尊厳、男女の平等を基本とした民法の改正から73年経過しても、日本の社会では相変わらず家を中心に物事が進められています。この間、親子、家族、親族の営みは多様化し、均分相続の定着によって家制度は大きく変わろうとしています。少子高齢化と働き方改革が進む中で老後を迎える配偶者に必要なものは何か、という観点から相続法が見直されました。本来、子は養育の過程を経て親から相当な支援を受けているのだから、配偶者の法定相続割合を3分の2にすべきだとする案も検討されるなど、相続後の配偶者の生活に配慮したものになっています。


・配偶者居住権という財産

 人生100年時代における配偶者の生活には、一定の住まいと年金などの生活資金を確保することが当面の要件です。居宅が財産の大部分を占める相続の場合、配偶者がこれを優先取得すれば金融資産を取得できないことになります。これを解消するために配偶者が生涯住み続けられる「配偶者居住権」が創設されました。遺産分割協議又は遺言によって配偶者居住権を取得すると、その敷地に対する権利も取得し登記することができます。建物が他人に譲渡されても居住権だけは終身(配偶者が死亡したときはこの権利は消滅します)守られるわけです。配偶者居住権は土地建物の一部ですから相続税の課税財産になります。配偶者の年齢にもよりますが、土地建物のおよそ30%相当額が評価の目安で、敷地に対する権利については小規模宅地の評価減の特例を適用することができます。


・居住用財産の生前贈与

 また、婚姻期間が20年以上の夫婦間では、居住用の土地建物やこれを取得するための資金を2,000万円まで無税で贈与することができます。配偶者の住宅政策の一環ですが、贈与者の相続の際には特別受益財産として、相続財産に持ち戻して各相続人の相続分を調整する必要があります。この持ち戻し計算によって生前贈与の効果は半減し、配偶者は金銭の持ち出しになります。そこで令和元年7月1日以後に実行された「配偶者への居住用財産の贈与」については、「持ち戻し計算は不要」とする遺言があったものとみなすことになり、この結果的に贈与はなかったものとされます。その分老後に必要な金融資産を確保できそうですが、10年以内に贈与者が亡くなったときには、他の相続人から遺留分を請求されることがありますから留意して下さい。


・遺言がより身近に

 均分相続が定着したのか、被相続人の「相続人」への思いが正しく伝わらない相続が実に多い。結果として、家業や家が成り立たず、親族関係が瓦解する事例は枚挙にいとまがない。子や孫の安寧を願い相続人らの権利と義務を明確にしたいときは遺言が恰好の手段なのです。とはいえ、相続人から言われて最期に書くのが現状。争いの種にもなっています。今までの自筆証書(全文が手書きの遺言書)は、目録の筆記や保管方法で苦労し裁判所における検認が必要でした。昨年1月からは、遺言本文のみ自筆できれば、目録はワープロで印書したり通帳のコピーや登記事項証明書の添付でもよいことになりました。


・法務局で遺言書を保管

 今年の7月10日からは、封入しない自筆の遺言書を法務局の窓口へ遺言者が申請すると、内容をチェックして複写したうえで保管してくれることになりました。3,800円の手数料を払う必要がありますが、改ざんや紛失の心配がなく、経済的で確かなメッセージになりそうです。相続が開始した時は法務局へ自筆証書遺言の謄本を請求することができ、裁判所の検認を受けずに執行することができます。


・遺言書があれば相続税も有利に

 遺言書があると、遺産分割協議を経なくても遺贈によって財産を取得したことになり、財産評価や税額軽減の特例を受けることができるのです。各相続人の主張が多様で期限内に分割協議がまとまらない場合でも、故人の遺志に沿って相続を進めることができるので、遺言書は我が家の生活設計を実践するうえで必須な手段といえます。


(つづく)

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