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  • 執筆者の写真税の西田

相続対策は仕事と生活の見直しから

討論する両親と息子夫婦

Q 質問

団塊の世代の私たち夫婦は金婚式を迎えました。親子でこれからの生き方を話し合っています。夫婦の老後の過ごし方、家業と祭祀を誰に託すか、各相続人に何を相続させるかなど疑問が尽きません。これから相続のために何をしておくべきですか。


 

A 回答

均分相続に備える

「個人の尊厳」「男女の平等」が謳われて77年。日本の社会は相変わらず家を中心に物事が考えられてきました。家と家の固い絆が集落の営農を支え、家業と生活を守ってきたことから、均分相続になっても家制度を否定できないでいる。一方で、働き方改革と相まって次世代は家を離れて自由に地球を駆けめぐる。赴くところに居を構えると実家はやがて空き家になる。親の相続で家を守る大義が示されなければ、子どもたちは均分相続を選好するでしょう。


収益性がなければ

土地神話が崩れて久しいが、土地は財産でないことがよく分かった。土地を守るために負担した費用の大きさも経験してきた。固定資産税と都市計画税、次の相続までの相続税の保有コストは年にして2.8%になる。次の相続まで30年とすると遊休地は、84%目減りする勘定になる。5,000万円の土地なら毎年300万円の賃料収入が必要になる。遊休資産の相続税を払うために優良物件を処分しないことが大切です。家産としての事業用資産は収益性と換金性が無ければ承継してくれないかもしれない。


承継される家産を

これからは固定資産税や相続税の負担が大きい広大な屋敷は要らない。200㎡(80坪)の敷地に30坪の平屋建てがちょうどいい。固定資産税は200㎡まで6分の1、相続税は330㎡まで5分の1課税の特例がある。次世代は経済性があって機能性の高い生活用財産を求めています。


配偶者の老後を準備する

高齢社会を想定した税制によって、消費税が所得税や法人税を抜いて税収のトップになった。社会福祉のために毎年23兆円もの安定した財源が確保されています。それでも、国民にはいま以上の自助努力が求められるでしょう。人生100年時代を生き抜くためには安定した収入が必要です。公的年金のほかに個人年金や配当収入など。いざという時に死亡共済金が出ると次の準備ができます。


相続が始まると

まずは、地域の慣習や風習、家風にしたがって葬儀を執り行います。相続が始まると遺産は相続人の共有になるので、以後の異動には全員の合意が必要です。当面の地代や家賃の受け取りと借入金の返済口座を開設します。期限のある税金や公共料金のほか当座の支払いを優先します。遺言書が発見されたら裁判所の検認を受け、遺言執行者は遺産に係る財産目録を作成して相続人へ交付します。各相続人は相続の開始を知った時から3ヶ月以内に自らの判断で相続を放棄することができます。相続手続は音信不通の相続人を探すことから始めます。遺言執行者は遺言を執行します。遺言がなくても相続人全員の協議が整えば、遺産を分割取得することができます。相続税を申告納税すべき者は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告書を提出し納税しなければなりません。

申告期限までに分割協議が整わない場合は各相続人が法定相続分によって遺産を取得したものとして期限内に申告納税しなければなりません。この申告では各種特例の適用は受けられません。


相続対策とは

このように相続と相続税は法律ですから、決められた期間内に必要な手続きを取る必要があります。相続対策は円満で確かな相続を実現するための条件づくりです。相続人の権利と義務を明確にすること、均分相続に備えた財産の組み替えをすること。相続税を申告期限内に完納するための準備をすること、承継される家産をつくることなどに今から取り組んでいくことになります。


不確実性の中の相続対策

賃借人の加齢、孤独死、被後見人を予知して、使用貸借への変更など賃貸借契約の見直し、建物へ死因贈与の仮登記を申請するなど、保全措置を講ずることが望まれます。次世代は、家や家業ではなく、自らの生活設計に必要なものは何かを優先しています。確かな相続のために、賢い暮らし方、次世代へ残すべき遺産を整えておくことにします。



(『広報ほくさい』・『JA埼玉みずほ』2024年8月号掲載)

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