• 税の西田

生前の預貯金の払い戻しと名義預金の税

最終更新: 5月11日

Q.質問 お医者さんから夫の病状を告げられたので、とりあえず夫の貯金口座から500万円を払戻しました。医療費などを支払い相続開始時の現金残高は300万円でした。その後、現金は全額葬式費用にあてました。金庫の中には普通貯金通帳のほか10年前に預け入れたと思われる子や孫たちの名義の定期貯金の証書と届出の印鑑がありました。普通貯金の口座から毎月30万円を払戻しているほか、3年前に600万円、8年前に700万円を払戻したこともわかりました。これらの取引の結果としての残高証明書をもとに相続税を計算して申告納税したいと考えています。相続税の申告前に見直すべきものがありますか。 A.回答 ・相続預貯金の払戻し 相続が始まると、各相続人は遺言書があるか遺産の分割協議が整うまでは単独で相続預貯金の払戻しができず不便でした。そこで相続法が改正され、遺産分割の調停や裁判が長引く場合、借入金の返済や税金の納付、生活費の必要があるときは、預入店舗ごとに相続人一人あたり最高150万円まで払戻しを請求することができるようになりました。 ・預貯金が現金という相続財産に それでも、相続が近いことを知らされると、相続人らは被相続人の預貯金の払戻しを実行するものです。あとで預貯金を下ろせなくなるから、葬式費用を用意しておきたいから、預貯金の残高を小さくしておきたいから、などと動機はさまざまです。生前の払戻によって葬式費用を賄うことができるも、預貯金が減って現金が増えただけのことですから、急いで下ろす効果は少ないのです。 ・生前払戻金は財産 生前に払戻したまま相続を迎えた現金は、どこまでも相続財産ですから、お葬式費用や借入金等の支払にあてたとしても、これと相殺することはできません。相続財産から債務や葬式費用を二重に控除することになるからです。 ・生活費としての預貯金の払戻し  老夫婦世帯において月々払い戻す30万円は、生活費のための預貯金の取崩しですが、生計中心者でない被相続人の預貯金を払い戻して負担する必要以上の生活費は、生活扶養者等に対する贈与または貸付金とみなされ易いですから留意して下さい。定期的な払戻金がヘソクリとして家族名義の預貯金になっていないか、もう一度見直してみてください。 ・数年前の払戻金の使途と税金 生前における預貯金の払戻し金が相続財産を構成することがあります。被相続人が払戻した分だけ相続財産は少なくなっているわけですから、生活費として費消したものでも、払戻した資金の使途をよく確認して財産性を見極める必要があります。①金銭の生前贈与を受けた人は贈与税の申告納税のほか、3年以内の贈与に加算が必要になることがあります(相続時精算課税制度の適用を受けた場合は必ず加算します)ので留意して下さい。②家族の名義にした貯金は相続財産そのものです。③共済掛金の払込みに当てた場合は、解約返戻金相当額又は契約者への掛金相当額の貸付金が相続財産になり、契約者である被相続人の死亡に伴う共済金は非課税財産になります。④相続人の名義で農機具や自動車などを購入した場合は、購入額を相続人への貸付金とします。⑤被相続人の名義で購入した農機具や自動車はその未償却残高が相続財産になります。 ・子や孫への名義預貯金  10年前に子や孫たちの名義とした定期貯金は、被相続人が子や孫たちへ贈与しようとした財産と思われます。贈与の要件を満たすためには「あげます」「頂きます」の契約のもとに、受贈者が自ら管理し処分できるものでなければなりません。定期貯金の証書や届出の印鑑が金庫内に保管されているということは、まともに手渡すと使われてしまうのではと贈与者が管理してきた典型的な名義預貯金です。すでに6年の更正処分の期限を超えていますが、実在する預貯金ですから相続税の課税対象になります。 ・大きな払戻しへの記録 預貯金口座からの払戻しを請求すると、その事実が通帳に記載されますがそれだけでは後日の検証はできません。誰が請求したのか、使途は何か、誰に渡したのかなどを付記しておくことです。生前払戻しは、生前に相続人が目的もなく慌てて行う場合が多く、この期に多額の現金を抱え、争いの種になりかねない。被相続人が、かねてから「ああしたい」「こうしておきたい」などと考えてきたことを、意思能力があるうちに実現してあげるのも相続人の役割だと思います。


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