• 税の西田

後継者に農業経営を移譲した場合の税務

Q 質問

 子が結婚するのを機に、農業経営の全てを子に移譲することになりました。来年の1月1日をもって息子は開業、父は廃業します。農地は生前贈与によって父から息子へその所有権を移転し、農機具等は無償で子に貸与します。資金を持たない息子に父の営農口座の残高300万円を引き渡すことにしました。移譲後は息子の農業に専従者として従事することにしています。息子は就農にあたり新規就農促進事業の支援を受ける予定です。開業にあたって、経営上、税務上留意すべきことがありますか。


A 回答

・経営移譲にあたって

 経営移譲の動機が経営者の高齢化や疾病・障害等による場合は、栽培技術や販売方法の秘伝を承継する機会を逸してしまうものです。バトンタッチの時期は、経営基盤が整ったところで助走しながら自然な形で実行すると効果があります。目的は事業の承継ですから、まず「入りを図って出を制す」考え方のもとに5年・10年先の事業計画を立てて将来を見通します。できれば、わが家にとって最も経済的な事業規模を決めておきます。経営移譲は、相続において、「家業に必要な財産を確かに承継できるしくみ」が前提になります。


・開業に伴う届出

 開業したら、子は開業の届出、親は廃業の届出を税務署長へ提出するほか、特典の多い青色申告書を提出できるように所得税の青色申告承認申請書を開業後2ヶ月以内に出しておきます。生計を一にする父は子の専従者になるとのことですから、青色事業専従者給与に関する届出書源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出します。なお、大きな投資が予定される場合は消費税課税事業者選択届出書の提出も忘れないようにしましょう。


・農地を贈与された場合

 経営移譲に伴う農地は親子の賃貸借または使用貸借とするか、売買や贈与によって子の所有にすることが考えられます。経営移譲による贈与には特例があります。農地を生前に一括贈与を受けた場合は農地の贈与税の納税猶予の特例があります。農地の贈与者が死亡するまで、または受贈者が死亡するか営農をやめるまで贈与税の納税が猶予されます。贈与した親の相続では納税猶予を受けた農地を含めて相続税額を計算しますが、さらに農地の相続税の納税猶予の特例を受けることができます。


・経営資金等の移転

 子に農業経営を任せるときに、親子で運転資金を授受することがあります。この300万円は、後日返済するものであれば親子の金銭の貸借ですが、返済不要とした場合は贈与になりますから、翌年の3月15日までに贈与税の申告書を提出して19万円の贈与税を納付しなければなりません。


・新規就農促進事業からの受給金

 農業次世代人材投資事業や新規就農促進事業などの受給金は、子の農業所得の収入金額として所得税や災害復興特別所得税の課税の対象になりますから留意してください。


・父は青色事業専従者になる

 子と生計を一にする父が、子の営む農業に専ら従事することによって受け取る青色事業専従者給与は父の給与所得として年金などの所得と合算して所得税が課税されます。なお、専従者となった父は他の親族の扶養親族になることはできません。


・農業の法人成り

 法人にすれば必ず儲かるというものではありませんが、後継者の受け皿としての農業法人では、個人に比べてより効率的な経営を目指すことができます。特に将来の規模拡大に伴う家族労働から雇用労働への転換、収入の平準化、事業承継の円滑化など、親子で家業を守るのに恰好な組織になりそうです。後継者の生活設計を実現するためにも、将来の経営計画に盛り込むとより効果が期待できます。


・農業機械等

 農地の生前一括贈与によって経営移譲をした場合は、農業機械なども贈与されたものとして贈与税が課税されます。そこで、農業機械等については贈与者の相続の際に相続税の課税財産として申告する旨の書面を提出しておく必要があります。生計を一にする親子間での賃貸借はありませんが、親から承継した農業機械等の減価償却費や租税公課は、子の農業所得の必要経費とすることができますから見落とさないようにしましょう。

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