Q 質問
主穀の生産と貸家経営を青色で申告しています。令和2年分の年末調整と確定申告は、そのしくみが複雑になったと聞きましたが、どんな点が改正されたのですか。実務上留意すべきことがありますか。
A 回答
・個人所得課税の見直し
令和2年分の所得課税は、給与所得の年末調整と確定申告における給与所得控除、公的年金等控除、所得年金調整控除、青色申告特別控除、基礎控除、ひとり親控除など、昨年までの所得税の常識を変えてしまいました。さらに、今年は新型コロナウイルス感染症等の影響によって給付された助成金等の申告が必要になることがありますから留意してください。
・給与所得控除の引き下げ
人生100年時代を見据えて、専門知識や技能を求める企業の動きに呼応した雇用から請負や起業へと働き方が多様化し、給与所得者との税負担の調整が課題になっていました。給与収入に応じて給与所得控除額が上限なく増加していく従来のしくみを是正すべく、一律10万円引き下げたうえ、給与収入が850万円を超えた場合の控除上限額を195万円としました。
・公的年金等控除の改正
給与所得控除との重複適用、世代内・世代間の公平性に配慮して、公的年金等控除額も一律10万円引き下げられました。公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除上限額を195万5千円としました。なお、公的年金以外の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、改正後の控除額からさらに一律10万円下げ、2,000万円を超える場合は一律20万円引き下げ、雑所得は増えることになります。65歳未満の受給者の公的年金等控除の最低保障額は60万円に、65歳以上の受給者は110万円になりますから留意してください。
・所得金額調整控除の創設
(1)給与所得控除の上限額が195万円に引き下げられたことから、本人が特別障害者に該当するか、23歳未満の扶養親族を有する者、特別障害者に該当する控除対象配偶者または扶養親族を有する者について、負担増にならないように調整控除します。給与等の収入金額(1,000万円を限度)から850万円を控除した金額の10%相当額(最高15万円)を給与所得の金額から控除することができます。夫婦とも給与収入が850万円を超え23歳未満の扶養親族がいる場合は、夫婦双方がこの控除の適用を受けることができます。
(2)給与所得と公的年金所得を有する者は、給与所得控除額と公的年金控除額からそれぞれ10万円が減額され負担増になることから、調整控除があります。給与所得控除後の給与所得の金額と公的年金等に係る雑所得の金額の合計額から10万円を控除した残額が給与所得の金額・雑所得の金額とされます。
・青色申告特別控除の改正
給与所得控除の引き下げに伴い、取引を正規の簿記の原則にしたがって記帳している者に係る青色申告特別控除の控除額は55万円(改正前は65万円)に引き下げられました。ただし、その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書の提出をe-Taxによっている場合には、青色申告特別控除を65万円とすることができます。
・基礎控除の改正
基本的な控除であり各所得階層に適用されるべき基礎控除は、昨年までは一律38万円でしたが、今年から10万円引き上げられます。合計所得金額が2,400万円以下の場合は48万円、2,400万円を超え2,450万円以下の場合は32万円、2,450万円を超え2,500万円以下の場合は16万円などと低減し、2,500万円を超える所得者には基礎控除の適用はありません。
・扶養親族等の所得要件
扶養親族や控除対象配偶者に該当するか、生計一の親族の資産に係る雑損控除を適用する場合の親族の合計所得金額は48万円以下とされました。配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得要件としての合計所得金額は48万円超133万円以下に、勤労学生の所得要件は75万円(改正前は65万円)以下で給与所得等以外の所得が10万円以下であることとされましたので留意してください。
・ひとり親控除・寡婦控除
寡婦控除(35万円)が廃止され、ひとり親控除に改組されました。婚姻歴や性別にかかわらず、現に婚姻をしていない者または配偶者の生死の明らかでない者のうち、合計所得金額が48万円以下である生計を一にする子を有すること、本人の合計所得金額が500万円以下であること、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと等により判定された「ひとり親」控除(35万円)が創設されました。
・年末調整の際に提出する申告書等
給与所得者が年末調整を受ける際に提出する申告書等は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、給与所得者の保険料控除申告書のほか、今年から「給与所得者の基礎控除申告書」「所得金額調整控除申告書」の提出が必要になりますから留意してください。
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