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相続手続きは何から始めたらよいか

Q.質問

 父の相続をどう進めていくべきかを知人に相談したところ、不動産を登記すれば預貯金の名義変更も簡単にできると教えられました。専門家の指示通り相続人の署名押印を受けて遺産分割協議書が完成しました。登記を終えたところで、相続税の申告のための財産目録を作成しているうちに、隣の町の農地や宅地、JA以外の預貯金と株式、共済契約などが発見されました。他の相続人へ改めて分割協議の申し入れをしましたが、やり方が悪いと同意を得られず困っています。裁判所での調停が想定される中、申告期限までに話し合いができない場合の相続税の申告はどうなりますか。全部の遺産について改めて分割協議をやり直すことができますか。遺産の分け方の基本は何でしょうか。


A.回答

・相続は財産目録の作成から

 相続手続きを始めるには、まず財産目録(財産と債務の内容を明らかにしたもの)を作って被相続人の遺産の全容を把握します。被相続人の財産に関する一切の権利義務は、相続人がいったんは承継しなければならないからです。財産より債務の方が大きい場合は、相続を放棄するかどうかの判断をしなければなりません。借地権や借家権、地上権・地役権、抵当権、仮登記など他人の権利がついている財産は、勝手に処分することはできません。借入金や未払金などの債務は約定に従って返済して、期限の利益を失わないようにしなければなりません。財産目録は被相続人が先代から承継し、生涯に積み上げた遺産そのものを表現しています。


・遺産分割とは

 被相続人の財産や債務は、相続人が一人であれば単独で相続しますが、相続人が数人の場合は相続人全員の共有物になります。共有は生活や仕事に支障をきたすだけでなく換金性や収益性も減殺され対外的な信用も失いかねないものです。そこで、共有財産の権利義務を各相続人に帰属させるための遺産分割(共有物分割)がどうしても必要なのです。


・遺産分割の基本

 遺産の分け方について、民法では「遺産の分割は、遺産の種類及び性質、相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」として、安易な分割をいましめています。相続とは文字通り「相い続ける」ことですから、必要な人に必要な財産を相続させることが基本であり節税の原点でもあります。配偶者には生活を優先した財産を、家業に必要な事業用の資産は後継者に相続させるなど、各相続人への熟慮が必要です。確かに登記や名義書換が済むと相続は終わったかにみえますが、名義書換が目的になると「ちょっと待てよ!」ということになりかねない。被相続人の生活や家業を承継すべき者は、各相続人の権利と義務をふまえた我が家の相続計画を各相続人に丁寧に説明して納得を得ることが大切です。配偶者が全部相続すれば納税は不要になるから、とか次の相続がまた大変だから子が全てを相続する、などの発想は改めなければなりません。


・遺産分割で税負担も変わる

 被相続人と同居して生計を一にしてきた子が、その居宅や敷地を相続して引き続き住み続けると、居宅の敷地のうち330㎡までの部分(被相続人から家業を承継して引き続き事業を継続する相続人には事業用の建物の敷地のうち400㎡までの部分)は20%の評価額で相続税を計算することができます。また、夫の相続の際に配偶者が取得する財産が法定相続分(子と相続する場合は二分の一、夫の兄弟と相続する場合は四分の三、夫の親と相続する場合は三分の二)又は一億六千万円までは配偶者の税額軽減の特例によって相続税の納税額はありません。配偶者自身の相続(二次相続)では法定相続人が一人少なくなること、配偶者の固有の財産があることから夫の相続と妻の相続の税負担額が最も小さくなるように試算をして夫の相続での取得財産をきめることができます。また、借入金を相続する人は、承継する借入金以上の財産を相続しないと、財産から控除しきれない借入金は切り捨てになりますから留意して下さい。


・財産目録は専門家に頼む

 相続財産の大部分は不動産と預貯金ですから、固定資産税の名寄せ台帳と預貯金通帳を見れば誰でも目録を作成することができます。専門家はさらに故人の仕事や生活の経過をたどり、被相続人の生活を復元するかのように遺産をさがしていきます。例えば、固定資産税の納税の状況から、どこか(市町村)に土地建物があることを突き止め、賃貸料収入から他の金融機関の口座の存在を確認します。まとまった生前払い戻し金の使途をたどってみると一時払いの生命共済契約の掛金であったり、相続人への三年以内の贈与など、納税者から提示された資料から専門家として知り得べき財産はもれなく特定していきます。


・申告漏れは余計に税金を納めることに

 当初の遺産分割協議書をうのみにして相続税の申告書を提出した場合は、不足税額とこれをもとにした過少申告加算税と延滞税を納めなければなりません。場合によっては重加算税が課されることがありますから留意して下さい。


・遺産分割のやり直し

 遺産分割協議は相続人全員の合意によってやり直すことができます。申告期限内であれば修正申告や更正の請求の必要はありませんが、各相続人にいったん帰属した財産が自らの意志によって他の相続人へ再配分することですから、贈与税が課税されることがあります。さて、一部の財産が除外されていたからとして申告期限後に遺産分割をやり直した場合、贈与税を課されないかは疑問です。遺産分割に大きな瑕疵がないかぎり移動した財産は贈与によって取得したものとみなされるからです。なお、あとから発見された財産が申告期限までに分割されなかった場合は、各相続人が法定相続分によってこれを取得したものとして相続人全員が相続税を申告納税しなければなりません。後日、分割されたときは修正申告や更正の請求によってすでに納税した相続税額を精算することができます。この場合は加算税や延滞税はかかりません。

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