• 税の西田

相続法の改正で相続対策はどう変わりますか②

Q 質問

 ともに81歳になった父母は心身ともに健康な毎日を過ごしています。昨年から今年にかけて相続の法律が変わったそうですが、どんな改正ですか。我が家も相続対策を始めたいと考えています。どんな対策が有効ですか。

A 回答

・遺言書は相続の三種の神器

 相続を経験した人たちは、遺言書の必要性を認めています。遺言書はすべてではないが、被相続人の思いを貫くことはできる。相続人に勧められて書くことが多く、もめごとの種にもなっています。遺言がないと、協議を重ねるも決め手を欠き、寄与分も期待度も反映されない「均分」という結果になりかねない。今や遺言は、養子縁組や贈与、共済などとともに相続対策には欠かせない存在です。

・贈与や遺言には遺留分がある

 生前贈与や遺言は、被相続人の考えどおりに特定の相続人に財産を取得させることができるが、遺言書の存在がわかると、誰に書いてあるのか、どんな内容かなどと詮索をめぐらし動揺するものです。それだけに不公平感を感じると、遺留分を請求することがある。これまでは、相続財産そのものを返還してもよかったが、令和元年7月1日以降の相続からは、遺留分の侵害額を現金で返還しなければなりません。一人の相続人に「すべてを相続させる」とする遺言は見直す必要がありそうです。

・侵害額をどのように支払うか

 請求者との合意によって、現金でなく土地で返還する場合は、時価額で土地を譲渡したものとして譲渡所得税が課税されます。侵害額を支払うために土地を売却する場合は、譲渡税のほかに譲渡費用がかかるので、侵害額のおよそ1.3倍の土地をあてることになります。遺産分割協議によって侵害額に相当する土地を相続させることも可能です。財産の構成によっては遺言の効果が半減することもあります。生前に換金しておくか、各相続人に必要な遺言を書くか、生前に贈与するなどの工夫が必要です。

・侵害額の授受と相続税

 相続税の申告期限内に侵害額の授受があった場合は、各相続人が取得した遺産額に応じて相続税を申告すればよく、申告納税したあとで侵害額の返還が行われた場合は、受遺者は返還した侵害額に対応する相続税の還付を請求し、侵害額の請求者は、侵害額が確定した日の翌日から4ヶ月以内に、修正申告書または期限後申告書を提出することになります。この場合は加算税や延滞税はかかりません。なお、双方が侵害額の授受について修正申告も更正の請求もしないことができます。

・特別寄与料の請求

 老後は誰に面倒を見てもらうか、誰がこの跡を継いでくれるのかなどの課題を承知するも、養子縁組はもとより遺言も失念したまま、子の配偶者、兄弟や甥・姪、いとこなど相続人以外の親族の世話になり、何の報いもしないで相続を迎えてしまうもの。そこで、令和元年7月1日以降の相続からは法定相続人以外の親族が被相続人の療養看護に無償で努めた場合は、相続人に対して金銭による寄与料を請求することができます。現行では、法定相続人が被相続人の療養看護に著しく寄与した場合は、寄与分を請求することが認められています。

・寄与料と相続税の申告

 寄与料の額が確定した場合は、寄与者が寄与料の額に相当する金銭を被相続人から遺贈によって取得したものとして、相続税が課税されます。寄与料の額が確定したことによって、新たに相続税の申告義務が生じた者は、寄与料の額が確定したことを知った日から10ヶ月以内に相続税の申告が必要になります。申告期限内に寄与料を支払った相続人は、相続税の課税価格から寄与料の額を控除します。申告期限後に寄与料が決まった場合は、すでに申告した相続税の課税価格から支払った寄与料の額を控除して、更正の請求をすることができます。

・相続預貯金の仮払制度

 当面の生活費やお葬式費用、借入金の返済のために被相続人の預貯金を払い戻そうとしても、相続人全員の合意がなければ単独で払い戻しを請求することができません。そこで、令和元年7月1日以降の相続手続きにおいて遺産分割の審判や調停が申し立てられている場合は、裁判所の判断で必要な額の全部又は一部を仮に払い戻すことができるようになりました。仮に払い戻した預貯金は、後日改めて遺産分割の対象になりますから留意してください。なお、裁判所の判断を得なくても、各相続人は預貯金残高の3分の1かつ法定相続分まで(金融機関ごとに上限150万円まで)を遺産の一部分割として払い戻しを受けることができます。

・預貯金の生前払い戻し

 相続人は、相続を予知すると預貯金を必要以上に払い戻して本番に備えることが多く、遺産分割のやり直しや税務調査の動機にもなっています。預貯金が現金になっただけで相続財産の額は変わらないのです。相続税の申告や分割協議の場では、その使途を明らかにする必要があります。仮払制度によって、納税資金が不足することも想定されますから、相続時に確かに支払われる共済金を準備するなどの対応が必要です。

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