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執筆者の写真税の西田

相続対策は毎日の仕事と生活の中で(続き)

Q 質問

 財産を管理していた父が「お前にすべてを任せる」と言って通帳を渡されました。先々を考えて、父の貯金から配偶者や孫達へ贈与したほか居宅をリフォームしました。さらに、農機具と自動車を購入するなど仕事と生活の改善をさせてもらいました。その年末に父は他界しましたが、円満裡に分割協議を経て相続税を申告納税することができました。1年後に税務調査があり、子ども名義で購入した農機具と自動車、家族の名義にした預貯金について修正申告をして加算税と延滞税を納めることになりました。節税のつもりが増税になってしまい、相続税の負担を軽くしようとした拙速な行動を反省しています。普段から実行しておくべき相続対策とはどんなことなのでしょうか。


A 回答

・均分相続になって75年

 家督相続から均分相続になって74年経つだけに、家と家業の継ぎ方、家産の持ち方の意識は大きく変わろうとしています。遺産は先祖からの大切な授かりものとして世代から世代へと受け継ぐことが美徳でした。これからも続けたいところですが、その大義が薄れてきたようです。家と家業の存在意義を見直すとともに、相続人の権利と義務を明確にするための対策が必要になってきました。


・相続対策とは

 いつ発生するかわからない相続は家族の歴史そのものです。相続は毎日の仕事と生活の積み上げですから、与えられた条件のもとで受けざるをえないのです。財産がどこにどれだけあるのかを把握したら目録にして、誰に何を承継させ、どんな負担をしてもらうのか、祭祀は誰が主宰すべきか、相続税はどのように準備して納税するのか。遺産の構成は納税に堪えられるか。など相続の本番に備え結果を想定して段取りするのが相続対策です。


・相続対策の基本

 節税に腐心したり、無策で成り行き任せにしたりしておくと、我が家の相続はあるべき方向を失い、家風にそむいた結果になってしまうかもしれない。相続が問題になるのは、生前に親子や兄弟の対話が少なく各相続人の立場を理解していないことも一因。将来に備えて親子による生前協議を開くことをお勧めします。親が子に期待すること、相続人自らの生活設計について、各相続人が認識している平等な相続とは何か、家を守ること祭祀を主宰することの大切さ、正しい相続観などを徹底して話し合うことです。生前における親の言葉の重みは大きく、余計な争いを避けられ、何事にも一喜一憂しなくて済むことが大きな効果かもしれません。


・今すぐ必要な対策

 みんなの気持ちが一つになったら、被相続人は不動の意思をもとに各相続人に託すべき役割と相続させたい財産を遺言します。家業を移譲するために、承継しやすい経営環境を整え我が家の秘伝を伝えます。生前に移転しておくべき事業用の財産は、相続時精算課税制度とか農地の贈与税の納税猶予制度などを使って後継者のものとします。配偶者には居住用財産の贈与の特例を使って居宅などの所有権を移転(贈与)しておきます。親子関係をつくるための後継者や弟妹との養子縁組を進めます。隣地との境界問題は長い間の懸案ですから当事者ならでは。解決しておくと納税対策にもなります。


・当面の相続対策

 生前贈与に優先して実行すべきは、自らの療養・介護資金を確保しておくことです。跡取りは被相続人と同居(生計を一にする)することで相続税が軽減される仕組みがあります。障害を持つ子のために障害者の生涯扶養を非課税で信託することができます。なお、余裕があれば、子や孫たちへの教育資金の一括贈与、子や孫たちの独立と住宅取得を支援する住宅取得資金の贈与の特例があります。相続税の納税資金を相続開始時に手当てするために、被相続人が相続人を受取人とする終身共済に非課税枠いっぱい加入しておきます。


・相続対策への心がけ

 相続対策を売り物にした土地活用が盛んですが、相続税は安く済んでも利益が伴わない、借入金を返済しきれない、元手を回収できない、換金できない、といった節税を鵜呑みにした課題を聞かされることがあります。地主は土地貸しに徹することも有効な対策です。節税を得るための費用と得られる節税効果を事前に自ら吟味して決断することが大切です。青色申告の仕組みをフルに活用すること、家族労働を正しく評価すること、個人事業を法人成りして経営をより専門化し効率を求めること。税法は普段の仕事や生活を改善すると節税を伴った相続対策を着実に進められるものです。

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