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  • 執筆者の写真税の西田

相続対策は毎日の仕事と生活の中で

Q 質問

 財産を管理していた父が「お前にすべてを任せる」と言って通帳を渡されました。先々を考えて、父の貯金から配偶者や孫達へ贈与したほか居宅をリフォームしました。さらに、農機具と自動車を購入するなど仕事と生活の改善をさせてもらいました。その年末に父は他界しましたが、円満裡に分割協議を経て相続税を申告納税することができました。1年後に税務調査があり、子ども名義で購入した農機具と自動車、家族の名義にした預貯金について修正申告を求められました。節税のつもりが増税になってしまい、相続税の負担を軽くしようとした拙速な行動を反省しています。普段から実行しておくべき相続対策とはどんなことなのでしょうか。


A 回答

・なぜ税務調査になるのか

 公平課税を貫くために、納税者が提出した相続税の申告書は所定の審査を受けることになります。申告された財産が過少であったり税額の計算に誤りがあったりする場合は、臨宅での税務調査になることがあります。毎年提出される所得税の確定申告書、法人税の申告書、各種支払調書、取引の資料箋、お尋ねへの回答、土地等の譲渡内訳書、財産債務調書など膨大な情報が調査のもとになるわけです。


・直前対策の効果は大きい

 相続税は相続開始時の財産に課税することから、直前の払戻金は「貯金」が「現金」になったわけですから、その使途を明らかにしておかなければなりません。ところで、贈与は「あげます」「いただきます」の合意によって成り立つものです。贈与者が意思表示をすることができない状態であったり、受贈者が知らなかったりする受贈者名義の預貯金の贈与は成立していないことになります。よって、預貯金は現金か貸付金として、子ども名義で購入した農機具と自動車は子どもに対する相続開始年の贈与として相続税が課税されることになります。大義のない相続直前の対策は、相続人のひんしゅくを買うだけで大きな効果はなさそうです。


・均分相続だからこそ

 相続が始まると、被相続人の遺産は相続人に引き継がれ、相続人が複数の場合は各相続人が法定相続分で共有することになります。共有状態が続くと、関係者に迷惑をかけるだけでなく、自由に処分したり使用収益したりすることができない不便な財産になってしまうので、誰が取得するのかを速やかに決めておきたいものです。均分相続の時代だけに、家業を嗣ぎ祭祀を主宰する1人の相続人に遺産を集中するためには、相続人の権利に配慮しながら各相続人にとって最もふさわしい財産を準備しておく必要があります。


・財産の持ち方使い方

 「収益性」があって「換金性」がなければ、財産とはいわない。しかも安定していることが必要です。蓄えで生きる時代だけに、居住用財産はあくまでも生活の手段として、小規模の330㎡の敷地に100㎡程度の瀟洒な平屋建てが機能性・経済性に優れている。家業としての財産は原価ですから経済規模(採算がとれる経営規模)に合った効率的な生産手段が競争にも強い。いずれも所有するより借りた方が有利になってきた。政策としての相続税の評価の特例(面積規模の大きな土地や小規模事業用宅地など)を受ける財産は適用条件に合わせて所有するのも賢明な選択かもしれません。相続対策の当面の目標は、必要な人に必要な財産を取得させることで、余計な財産を持たないことです。


・生前贈与の必要性

 相続税を軽減するには「財産を減らす」「非課税財産を増やす」「財産を増やさない」「評価を下げる」のしくみが基本ですが、節税対策の物差しであって目的ではありません。家業に必要な財産や承継することが分かっている財産は、生前の移転を進めるべきですが、相続税と贈与税の実効税率を比較しながら、生前に贈与していくことが得策です。財産を減らすことに腐心するあまり目的もなく、必要性も緊急性もない生前贈与は無駄になることがあります。しょせん相続財産ですから、移転の手段と時期を見きわめ判断するとよいでしょう。

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