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相続人がいない借地人の相続と税金

  • 執筆者の写真: 税の西田
    税の西田
  • 3 日前
  • 読了時間: 4分
相続放棄と書かれたブロックとお金のイラスト

Q 質問

父は20年前に権利金もなく、甲と土地の賃貸借契約を結びました。甲はさっそく借入によって居宅を新築しました。先ごろ甲は借地上に居宅を遺して逝去されました。甲は事業の都合で地代を滞納したこともありました。甲は人柄がよく、地主になった私は甲の仕事を何かと支えてきました。甲の相続人(兄1人)は、本来なら借地上の建物を取り壊して更地で返還するか、相続して使用収益すべきところ、相続を放棄したのです。甲の葬儀と四十九日忌の法要は私が執り行いました。引き取り手の無い建物は地主のものか、取り壊して更地にしても構わないものかと素朴な疑問を抱きながらも、特別縁故者として財産分与を請求しました。このほど裁判所から2,000万円の金銭と借地上の建物(固定資産税評価額2,000万円)を地主に分与する旨の通知がありました。特別縁故者として分与を受けた場合に、どんな税金が課税されますか。

 

A 回答

借地人の建物が国のものに

甲の父母はいないので、甲の死亡による法定相続人は兄になります。甲の死亡によって一旦は兄が建物とともに土地の賃貸借契約を承継しますが、兄は甲の相続開始を知ったときから3ヶ月以内に相続を放棄することができます。兄が相続を放棄すると相続人がいないので、甲の遺産は相続財産法人として国のものにする手続きに入ります。地主など利害関係者の申立により裁判所が選んだ財産管理人がこれを管理しますから、地主といえども甲の所有であった建物は勝手に処分できないのです。

 

国は建物を換金することも

裁判所は、甲の相続人が他にいないか、甲の債権者や債務者、特別縁故者がいないかを捜すための公告をします。誰も申出が無ければ相続財産法人になった建物や預貯金は国庫に入ることになります。もちろん国は建物を管理することができないので建物の売却手続きを始めます。甲の借入金は保険金と相殺されました。借地権の付いた建物ですが売れなかったのでしょうか。地主の立場や縁故関係を考慮されたのでしょうか。1年余にわたる公告手続きを経て、預貯金と建物は残余財産から地主に分与されることになったのです。

 

財産分与に相続税が

現金と建物を合わせて地主が手にした遺産は合計4,000万円です。地主は相続税の課税財産として裁判所の通知を受けた日の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告書を相続人の住所地を管轄する税務署長へ提出して納税しなければなりません。


相続税額の計算

特別縁故者が相続財産法人から財産の分与を受けた場合は、甲の相続によって財産を取得したものとみなされて相続税が課税されます。相続税を計算する場合の基礎控除額は、兄が相続を放棄しても相続の放棄が無かったものとした比例控除600万円と定額控除3,000万円を合わせた3,600万円になります。これを基にして計算した相続税の総額は40万円になります。特別縁故者は親子ではないので相続税の2割加算が付きますので48万円が納付税額になります。遺贈によって取得したことになりますから、建物の登録免許税は2%(相続の場合は0.4%)と不動産取得税が3%かかります。

 

地主が建物を譲渡した場合

地主が分与を受けた建物を土地とともに他の人に譲渡した場合は、譲渡所得に対して所得税がかかります。建物は甲が取得した時の取得価額を基に計算した未償却残高(生活用の建物ですから法定耐用年数の1.5倍の耐用年数で計算した減価の額を控除した金額)で取得したものとし、土地は父の取得価額と取得時期を引き継ぐことになります。いずれも長期譲渡所得として税額を計算します。この譲渡が分与を受けた日から3年10ヶ月以内にしたものである場合は、すでに納付した相続税額のうち建物に対応する金額を譲渡した建物の取得費に加算することができます。


地主が建物を賃貸した場合

地主が分与を受けた建物を土地とともに賃貸した場合は不動産所得に対して所得税が課税されます。不動産所得を計算するうえでこの建物を取得するための登録費用と不動産取得税、甲が取得した時の取得価額を基に計算した未償却残高に対する減価償却費を必要経費に計上することができます。

 

(『広報ほくさい』・『JA埼玉みずほ』2025年6月号掲載)

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