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  • 執筆者の写真税の西田

家業を承継するための生前贈与と税金

Q 質問

家業と我が家の祭祀を主宰してもらうため、後継者に生産緑地や賃貸物件を贈与したり遺言で遺贈するつもりです。他の相続人2人には15年前に住宅取得資金をそれぞれ贈与したほか、死亡共済金5,000万円の受取人に指定しています。必要な財産を必要なだけ後継者に取得させることはできますか。どんな方法がありますか、そのために今何をしたらよいですか。

 

A 回答

家を守る大義を

農業は家と家の結びつきで地域社会の秩序を守ってきただけに、家業を承継する跡取りを擁立することが大きな課題になっています。均分相続を基本としながらも、跡取りに家産を集中する必要があるからです。家を守る必然性が薄れるなか、相続の権利義務をわきまえた相続人には「家を守り家業を継ぐ」大義を理解してもらう必要があります。


生前贈与と遺留分

家業を承継させるものとして贈与や遺贈によって財産を移転することは、他の相続人の遺留分を侵害することにもなります。遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に保障されている遺産の取得割合のことで、被相続人が生前の贈与や遺言によって財産を自由に処分することを制限するためのものです。遺留分は各相続人の請求によって得られる権利ですから、贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと時効によって消滅してしまいます。相続開始の時から10年を経過したときも同じです。


生前贈与や遺贈の限界

生前贈与によって家業を承継できても、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額を金銭で求められると、承継した事業が立ち行かなくなります。したがって、他の相続人の遺留分を考慮しながら生前贈与や遺贈を計画し実行することが大切です。


遺留分の対象になる財産

遺留分を算定する場合の財産の額は、(被相続人が相続開始時に有していた財産の価額+贈与の目的となった財産の価額-相続債務の全額)の算式で計算されます。贈与の目的となった財産の価額は、相続開始前10年間に行なわれた婚姻もしくは養子縁組のためまたは生計の資本として贈与(特別受益)を受けた財産の相続開始時の価額です。


遺留分の侵害額

つまり、生前贈与が相続開始前10年より前にされた場合は、遺留分侵害額の請求権が及ばないことになります。なお、遺留分請求権者が受けた生前受益財産については、相続開始前10年の限定が無いので、15年前に受贈した住宅取得資金は特別受益財産です。その分後継者が相続財産から支払う弁償額は減殺されることになります。


農地の生前一括贈与

農業後継者が農地の贈与を受けると贈与税の負担が大きいので、農地の生前一括贈与による「農地の贈与税の納税猶予の特例」を受けることにします。贈与者または受贈者のいずれかが亡くなるまで贈与税の納税は猶予され、免除されます。親の相続では引き続き「農地の相続税の納税猶予の特例」(終身営農)を受けることができるので恰好の手段になります。


分割協議による取得

親の相続では、農業後継者が使用貸借によって使用収益してきた農業施設は相続財産ですから、相続人全員による遺産分割協議によって取得者を決める必要があります。相続財産の大部分を占める農業施設を跡取りが取得することに他の相続人の理解が得られなければ、他の相続人に対して代償金を支払うなど、家業は不安定になります。


相続時精算課税による贈与

このほか相続時精算課税制度を選択して農地を贈与する方法があります。贈与財産の価額が2,500万円の特別控除を超える部分の20%相当額を納税しておき、贈与者の相続時に贈与された時の価額を相続財産に加算し、すでに納税した贈与税額を精算するしくみです。将来地価が値上がりする場合は最適です。


遺言にも遺留分の請求が

遺言によって農地や賃貸物件を遺贈しようとすれば、他の相続人から遺留分の侵害額を請求されかねない。後継者は「農地の相続税の納税猶予の特例」を受けられるも、他の相続人へ遺留分侵害額を支払い、相続税を納付することから事業の継続に支障をきたすでしょう。事業用資産の贈与をともなった早期の経営移譲をお勧めします。なお、他の相続人の相続取得が予定される財産は、可能な限り生前に贈与することにしましょう。


(『広報ほくさい』・『JA埼玉みずほ』2023年12月号掲載)


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