子や孫へ遺しておきたいもの
- 税の西田

- 3月26日
- 読了時間: 4分

Q 質問
主穀と施設野菜を経営する77歳の専業農家です。我が家の祭祀と家業を誰に承継させるか思案していたところ、長男の子(22歳)が農業に興味を持ち就農してくれました。私の相続人は配偶者(青色専従者)と長男(会社員)、二男(公務員)、長女(団体職員)の4人です。相続税の負担の最小化もさることながら次世代へ何を託し何を継承すべきでしょうか。
A 回答
相続観の変化
農家の相続は均分相続の定着によって家を守るという大義が薄れてきたようです。土地に執着した時代から40年経つだけに相続人らは土地建物より金融資産を志向するようになりました。相続を単なる財産分けの機会ととらえ、家より個人を優先する相続へ進みそうです。
家産の現状
子や孫たちの行く末を案じて目的もなく蓄え、横並びを好み隣と同じことをしていれば安心な社会を生きてきた親の世代の所産には枚挙に暇がありません。次の相続のために作付けしないでおく市街化区域の農地、子らが住まない大きな居宅、植木場になった広大な庭、他人が管理する自作地、契約書が無く賃料が据え置かれたままの賃貸物件、不要不急の道具などが厳然としている。次の世代がこのまま受け入れてくれるだろうか。個を優先する社会を生き貫く次世代へ押し付けにならないか、余計な相続税を納めさせることにならないか。
家産のたな卸
収入があり小金を持つ子ども達も50代になりました。営農が無くても実家の管理は煩わしい存在かもしれない。家産をたな卸して財産目録にしてみると財産債務の全容を一覧にして、相続税の総額を知ることができます。脈々と受け継がれてきた捨て難い道具、生活と家業に必要な家産、権利関係が争われている土地建物などに仕分けして、その収益性や換金性、承継性、機能性の優劣を評価し、債務の因果関係を把握できたら親子で生前協議を開きます。我が家が進むべき方向と承継計画を見直すことにします。
次世代への財産移転
次世代への財産移転を促す政策があります。持ち戻しのない基礎控除の付いた相続時精算課税贈与、非課税とされる住宅取得資金の贈与、教育資金の一括贈与、結婚子育て資金の一括贈与、特定障害者扶養信託受益権の贈与。就農と経営支援を兼ねた農地の贈与税の納税猶予制度などは、贈与目的にしたがって使い分けることにします。
お孫さんの就農の条件
就農にあたってお孫さんは、耕地や施設そして従事者を確保することになります。耕地と施設は祖父と使用貸借契約を結び、祖父母と母は専従者になります。耕地は生前贈与とするか遺贈を受けることにします。養子でないお孫さんへの農地の特定遺贈は認められません。新規就農者として、生前贈与による許可を得ることになりますが、農地の贈与税の納税猶予の特例は受けられません。できれば、祖父とお孫さんが養子縁組をされると生前贈与や遺贈の制限がなく、相続税も軽減されることになります。
後継者に遺したい家産
「児孫のために美田を残さず」という諺がありますが、地味あふれる耕地、優良な耕作権、守ってきた種苗、我が家の栽培の秘伝は全て次世代へ遺したいものです。農業は一人ではできない。農村社会を背負っていく人づくりが必要です。後継者も承継した家産を次の世代へ伝承する美田づくりを惜しまないことです。
後継者に託すこと
安心安全な食糧を供給するという自負のもと、採算の取れる持続可能な農業経営を目指すこと。既成概念にとらわれず限られた条件のもとで生産性を挙げる試行錯誤が大切です。適地適作の基本に立ち返るも、作目の組み合わせをして端境期を作らないことも大切です。自作地や管理を委託された耕地のほか、中間管理機構を通じて確保した優良な耕地の地力を引き出して生産性をあげることです。
経営を管理する
農地の固定資産税、都市計画税、土地改良費、水利費、償却資産税、小作料などの負担は生産原価であり投資です。投下した生産原価でいくらの付加価値を上げるべきかを戦略として考えます。JAの穀類乾燥調整施設や倉庫、農機具センター、JAの受委託事業を活用できればより効率的です。採算を優先した経営規模を模索する必要があります。借入金は利益から返済することですから欠損は回避しなければなりません。農業は事業ですから、減価償却費を計上してもなお利益がなければ元手を回収したことにはなりません。利益が出たら納税と社会還元を心がけたいものです。
(『広報ほくさい』・『JA埼玉みずほ』2026年2月号掲載)
※漫画は生成AIにより作成したものです。




コメント