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仮登記の売買・贈与と税金

執筆者の写真: 税の西田税の西田


家の模型を持つ高齢女性の両手の画像

Q 質問

10年前に父は、二男に居宅の敷地(父所有)を贈与するとした仮登記をしています。昨年5月には開発業者に農地を譲渡しました。契約時に5%の手付金を受け取り残金は農地転用の許可があった時に決済するという仮登記売買です。父、二男ともにこれらの仮登記に係る譲渡や贈与について税務申告をしていません。今年1月に父は急逝しました。農地の売買と二男への贈与、父の相続ではどんな申告が必要ですか。

 

 

A 回答

仮登記をするとき

売買や贈与によって所有権を取得した場合は、所有権の移転登記(本登記)をしなければ所有権を第三者に対抗することができません。しかしながら本登記に必要な条件や書類が整わないとして、契約の事実を証明したり権利を保全したりするために仮登記をしておくことがあります。

 

土地の売買の時期

土地の売買による譲渡所得は、土地の値上がり益からこれを実現するための譲渡費用や特別控除を差し引いた譲渡益のことです。譲渡益がいつ実現したのかは、売買契約を締結した日、代金を受領して土地を相手方に引き渡した日のいずれかとされます。ご質問の場合は、令和5年1月に土地の売買契約を締結していますが、農地の転用許可が得られたらとの条件ですから転用許可により登記書類の授受と代金の決済があった日に売買があったものとして譲渡所得を申告することができます。

 

譲渡所得の承継と申告

しかしながら、売買契約の途中で譲渡者が亡くなられていますから、相続人はこの契約の権利と義務を承継することになります。契約を承継した相続人は相続によって残代金の請求権を取得し、農地転用許可申請の義務と所有権移転登記の協力義務を負うことになります。農地の売買は誰がするのか、被相続人の譲渡とするか、相続人の譲渡とするかは相続人が有利な方を選ぶことができます。

 

譲渡税額の計算

被相続人の譲渡とする場合は相続人が相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に他の所得と合わせて準確定申告書を提出する必要があります。相続人が譲渡したとする場合は転用許可を得て残代金の決済を受けた日の翌年3月15日までに確定申告書を提出します。なお、相続人が申告納税した相続税額のうち譲渡した土地に係る部分は、譲渡税額の計算上、取得費に加算することができます。

 

相続の財産と債務になるもの

被相続人の譲渡とした場合の残代金請求権は相続財産として、納付すべき譲渡税額(所得税)は相続債務とすることができます。相続人が承継した残代金の請求権は他の財産とともに相続税の課税財産になりますから留意してください。

 

売買契約が無効になった場合

農地転用許可があって初めて売買が成立するという停止条件付の売買契約において転用許可条件が成就しないことが判明した場合は契約そのものが当初から無効ですから、手付金を返還して売買契約は解除されます。この場合は、すでに申告納付した所得税や相続財産となった残代金に係る相続税について更正の請求をすることができます。

 

居宅敷地の贈与

二男は10年前に居宅敷地の贈与を受けたとして贈与契約書を添付して仮登記をされています。贈与があったのになぜ贈与税を申告して納税しなかったのか、贈与契約をして10年経つのになぜ本登記をしなかったのか、贈与契約は外形を作出するだけのものだったのか、税務署長による更正の期間を意図したのか、贈与の既成事実を作ることだったのか、遺産分割に備えたものなのか。いつでも贈与できる親子の関係だけに、あえて10年前に贈与契約をしておく必要性がなかったとすれば、二男の居宅の敷地は贈与登記(本登記)をしたときに贈与があったものとされます。なお、すでに相続が発生していますから、父の相続財産とするのが正しい申告です。

 

贈与税の申告義務

贈与によって基礎控除(110万円)を超える財産を受贈した者は、翌年の2月1日から3月15日までに贈与税を申告し納税しなければなりません。なお、税務署長による贈与税の更正期間は6年ですが、贈与があったとして仮登記を経由しても納税義務が時効になることはありません。

 

居宅敷地の相続

本登記をする前に贈与者である父が亡くなられていますので、二男の居宅敷地は相続財産として相続人の共有になります。相続人全員による遺産分割協議において二男が取得することに異議がなければ、二男は居宅敷地を相続によって取得することになります。父の生前に仮登記や遺言の代わりに死因贈与契約を結んでおくと、遺産分割協議を経ないで遺贈を原因として相続登記をすることができます。ただし、登録免許税は贈与ですから2%(相続は0.4%)のほか不動産取得税3%が課税されます。

 

(『広報ほくさい』・『JA埼玉みずほ』2025年2月号掲載)

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