Q 質問
米と野菜を生産し販売しています。令和6年分の決算と確定申告において留意すべきことはありますか。
A 回答
所得計算の原則
農業所得の金額は、一暦年(1月1日から12月31日まで)の総収入金額から必要経費を控除して計算します。農業所得の総収入金額は農産物の販売代金のほか奨励金等の雑収入でその年において収入すべき金額です。現金の受け払いをもとに損益を計算できるのは青色申告者のうち、前々年の専従者給与の額を控除する前の金額が300万円以下であって、税務署長に「現金主義による所得計算」の届出をされた者に限られますので留意してください。
農業所得の金額
穀類など保存のきく農産物は収穫した時に収穫した時の価額で全収量分を計上します。野菜や花卉・果物・畜産物は出荷した時に出荷した時の価額を売上に計上します。例えば穀類は農協への委託販売(共同計算)に伴う仮渡金額です。庭先での販売金額や共同計算の過年度の精算金も対象になります。なお、販売を伴わない家事消費のみの農業による所得は農業所得ではなく雑所得になりますから留意してください。
農業所得の必要経費
農産物の生産原価・販売費用・施設費用・支払利息・共済掛金・管理費用は農業所得の必要経費になります。年末には生産物や生産資材などの現物を棚卸しするとともに、売上や必要経費について未収・未払い、前受・前払いの決算処理をして売上高に対する今年の必要経費を確定することにします。
定額減税と確定申告
今年は定額減税があります。令和6年分の合計所得金額(純損失等の繰越控除前の金額)が1,805万円以下の納税者に対して定額減税が行われます。納税者本人につき所得税で3万円、配偶者及び扶養親族も一人につき3万円の特別控除があります。給与所得者は6月分の源泉徴収税額から控除し、控除しきれない部分は翌月以降に順次控除します。なお控除しきれない部分は年末調整において控除します。年金所得者は6月分の年金支給額に対する源泉徴収税額から控除し、控除しきれない部分は翌月以降に順次控除します。個人事業主は7月(第1期)の予定納税額から控除し、控除しきれない部分は11月(第2期)の予定納税額から控除します。なお引ききれない部分は確定申告において精算することになります。また、住民税の特別控除は納税者本人につき1万円、配偶者及び扶養親族一人につき1万円とされ、給与からの特別徴収税額から控除し、控除しきれない部分は調整給付金になります。
インボイスの登録と申告納税
消費税の適格請求書等の発行事業者になることを希望し税務署長に登録された者は、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下であっても消費税の課税事業者として消費税を申告納税しなければなりません。簡易課税はもとより2割特例の適用を受けて計算した消費税の納税額は農業所得や不動産所得の必要経費になります。
誤りやすい取引事例
売上高の集計誤りや売上高の分散記録を原因とする修正申告の提出が増えています。例えば、庭先で領収書を発行しない現金取引、出荷先や取引先ごとに設定した口座へ入金された売上高を集計しなかった事例。宅急便の運賃を仮受け処理しながら、精算時の運賃を改めて運賃手数料として費用に計上したり、農場の取扱い手数料の受取り分が計上漏れになる事例。結果として売上高の過少申告や費用の過大計上になりますから留意してください。
相続があった場合の農業所得
農業を営んでいた被相続人の農業経営を承継した相続人は、相続開始のときから年末までの間の農業所得は相続人の農業所得として申告納税することになります。なお、相続開始年の1月1日から相続開始日までの期間の農業所得は、相続人が相続開始の日の翌日から4ヶ月以内に準確定申告として申告納税する必要があります。
相続人の開業届等
なお、事業を承継した相続人は、被相続人の廃業届出書と相続人の開業届出書を提出する必要があります。相続人が青色申告を希望する場合は、準確定申告書の提出期限までに「青色申告承認申請書」と「青色専従者給与に関する届出書」を提出しておくと提出年分から青色申告者になることができます。
(『広報ほくさい』・『JA埼玉みずほ』2024年12月号掲載)
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